NAME
       Julian  -  open  source  grammar-based  continuous  speech
       recognition parser

SYNOPSIS
       julian [-C jconffile] [options ...]

DESCRIPTION
       Julian は有限状態文法に基づく連続音声認識を行う認識パー ザ
       で す.記述文法を用いた2パス構成の段階的探索により高精度な
       認識を行うことができます.

       認識対象はマイク入力,録音済みの音声波形ファイルおよび特徴
       抽出したパラメータファイルに対応しています.また標準的な形
       式の音響モデルや言語モデルを読み込んで使用することができる
       ので,様々な音響モデルや言語モデルを切り替えて様々な条件で
       認識を行うことができます.

       語彙数の上限は 65,535 語です.

使用モデル
       Julian では以下のモデルを用います.


       音素モデル
                 音素HMM(Hidden Markov Model)を用います.音素モデ
                 ル(monophone) , 音 素 環 境依存モデル(triphone)
                 ,tied-mixtureモデル,phonetic tied-mixture モデ
                 ルを扱えます.音素環境依存モデルの場合は単語間の
                 依存関係も考慮されます. HTK のHMM定義言語で書か
                 れたHMM定義ファイルを読み込むことができます.

       言語モデル
                 タスク文法は,構文制約を単語のカテゴリを終端規則
                 としてBNF風に記述した grammar ファイルと,カテゴ
                 リ ご と の 単語の表記と読み(音素列)を登録する
                 voca ファイルに分けて記述します.これをコンパ イ
                 ラ mkdfa.pl (1) を用いて決定性有限状態オートマト
                 ンファイル(.dfa)と辞書ファイル(.dict)に変換し て
                 Julian に与えます.

音声入力
       マ イクロフォン端子やDatLink(NetAudio)からのLive入力が可能
       です.サンプリングした音声ファイル(16bit WAV(無圧縮),  RAW
       等)や特徴パラメータファイル(HTK形式)で与えることもできます
       .また専用クライアント adintool を用いたネットワーク経由で
       の音声入力も可能です.

       注意:Julian内部で計算できる特徴量はMFCC_E_D_N_Zのみです.
       これ以外の特徴抽出を必要とするHMMを使う場合は,マイク入 力
       や 音声波形ファイル入力は使えません.wav2mfcc(1)などの別ツ
       ールで抽出した特徴パラメータファイル(.mfc)を与えるようにし
       て下さい.

探索アルゴリズム
       Julian  の認識処理は2パス構成となっています.まず第1パスで
       は,与えられた文法よりも弱い制約規則を用いて高速かつ荒い認
       識を行います.ここでは文法規則からカテゴリ間の制約のみを抜
       きだしたカテゴリ対制約を用いて,LRビーム探索を行いま す .
       第2 パスでは第1パスの結果を元に本来の文法による再探索行い
       ,高精度な解を高速に得ます.第2パスの探索は最適解が保証さ
       れるA*探索となります.

       音 素環境依存モデル(triphone)を用いたときは,第1パスおよび
       第2パスで単語間の音 素 環 境 依 存 を 考 慮 し ま す . ま
       たtied-mixture やphonetic  tied-mixture モデルではGaussian
       pruningによる高速な音響尤度計算を行います.

OPTIONS
       以下のオプションで使用モデルやパラメータなどを指定します.
       コマンドライン上で指定することもできますが, jconf設定ファ
       イルとして1つのテキストファイル内にまとめて記述しておき,
       起動時に "-C" で指定することができます.

       ほとんどのオプションは Julius と共通です.
       Julian のみ:-dfa, -penalty1, -penalty2, -sp, -looktrellis
       Julius のみ:-nlr, -nrl, -d, -lmp, -lmp2,  -transp,  -sil-
       head, -siltail, -spdur, -sepnum, -separatescore

       以下は全てのオプションの説明です.

   音声入力ソース
       -input {rawfile|mfcfile|mic|adinnet|netaudio|stdin}
              音 声 デ ータの入力ソースを選択する.それぞれ 'raw-
              file' は波形ファイル,フォン 入 力 ,'adinnet'   は
              adinnet クライアントからのネットワーク経由入力,

              サ ポートする音声波形ファイル形式については,コンパ
              イル時にlibsndfileがあるかどうかで変わる.実際に そ
              の 実行バイナリでどの形式がサポートされているかはオ
              プション "-help" で確認できる.なお標準入力について
              はWAV(無圧縮) およびRAW(16bit,BE)のみをサポートする
              .
              (default: mfcfile)

       -filelist file
              (-input rawfile|mfcfile 時) 認識対象のファイルが 複
              数ある場合に,そのリストを与えてバッチ処理させる.

       -adport portnum
              (-input adinnet 時) adinnet で使用するポート番号.
              (default: 5530)

       -NA server:unit
              (-input netaudio時) 接続するDatLinkサーバ名とユニッ
              トID.netaudio 使用時必須.

   音声区間検出
       -cutsilence

       -nocutsilence
              入力に対する音声区間検出をするかしな い か を 指 定
              .(default:  mic または adinnet は ON, ファイル入力
              は OFF)

       -lv threslevel
              波形の振幅レベルのしきい値( 0 - 32767).振幅がこ の
              値 を越えると音声区間の開始とみなし,次にこの値を下
              回ったときに音声区間終了とする(default: 3000).

       -zc zerocrossnum
              1秒あたりの零交差数のしきい値 (default: 60)

       -headmargin msec
              音声区間開始部のマージン.単位はミリ秒
              (default: 300)



       -tailmargin msec
              音声区間終了部のマージン.単位はミリ秒
              (default: 400)

       -nostrip
              録音デバイスによって生じることのある,録音開始時 あ
              るいは終了時の無効な 0 サンプルの自動除去を行わない
              ようにする.デフォルトは自動除去を行う.

   音響分析
       -smpFreq frequency
              音声のサンプリング周波数を Hz で指定
              (default: 16kHz = 625ns).

       -smpPeriod period
              音声のサンプリング周期をナノ秒で指定
              (default: 625ns = 16kHz).

       -fsize sample
              窓サイズをサンプル数で指定 (default: 400).

       -fshift sample
              フレームシフト幅をサンプル数で指定 (default: 160).

       -delwin frame
              デルタウィンドウ幅をフレーム数で指定 (default: 2).

       -hipass frequency
              高域カットオフする周波数を Hz で指定.
              (default: -1 = disable)

       -lopass frequency
              低域カットオフする周波数を Hz で指定.
              (default: -1 = disable)

       -sscalc
              ファイル先頭の無音部を用いて,入力全体に対してス ペ
              ク トルサブトラクションを行う.ファイル入力に対して
              のみ有効.

       -sscalclen
              ファイル先頭の無音部の長さをミリ秒で指定  (default:
              300)

       -ssload filename
              ノ イズスペクトルをファイルから読み込み,それを用い
              て入力に対してスペクトルサブトラクションを行う. フ
              ァ イ ル は あ らかじめ mkss で作成する.マイク入力
              ,adinnet入力では"-sscalc" ではなくこちらを使う必要
              がある.

       -ssalpha value
              ス ペクトルサブトラクションのアルファ係数.大きいほ
              ど強く減じるが,歪みも大きくなる. (default: 2.0).

       -ssfloor value
              ス ペクトルサブトラクションのフロアリング係数.減じ
              た結果パワーが 0 以下になった部分スペクトルに対して
              ,原信号の係数倍の信号を割り当てる (default: 0.5).

   言語モデル(記述文法)
       -dfa dfa_filename
              文法の有限状態オートマトンファイル(.dfa)を指定する(
              必須).


       -penalty1 float
              第 1 パ スの単語挿入ペナルティを指定する (default:
              0.0)

       -penalty2 float
              第2パスの単語挿入ペナルティを指定 す る  (default:
              0.0)

   単語辞書
       -v dictionary_file
              単語辞書ファイル(.dict) (必須).

       -sp {WORD|WORD[OUTSYM]|#num}
              「文中の短いポーズ」に対応する音響HMM名を指定する.
              (default: "sp")

              以下のいずれかの形式で指定する.

                                     例
           単語名                    <s>
           単語名[出力シンボル]   <s>[silB]
           #単語ID                   #14

            (単語番号は辞書ファイルの並び順に0番から)

       -forcedict
              辞書中の誤った単語エントリをスキップして起動を続 行
              する.

   音響モデル(HMM)
       -h hmmfilename
              使用するHMM定義ファイル名(必須).

       -hlist HMMlistfilename
              HMMlist ファイル名.triphone体系のHMM使用時に必須で
              ある.

              このファイルは,辞書の音素表記 か ら 生 成 し た 論
              理triphone名からHMM定義名への写像を与える.詳細は付
              属ドキュメントを参照のこと.

       -iwcd1 {max|avg}
              triphone使用時,第1パスの単語間triphoneの音響尤度計
              算方法を指定する.

              max: 同コンテキストtriphoneの最大値 (default)
              avg: 同コンテキストtriphoneの平均値

       -force_ccd / -no_ccd
              単 語間の音素環境依存を考慮するかしないかを明示的に
              指定する.指定がない場合はモデルの名前定義から推 察
              す る.なおtriphone以外で -force_ccd を指定したとき
              の動作は保証されない.

       -notypecheck
              入力特徴パラメータの型チェックを無効にする.
              (default: チェック有効)

   音響尤度計算
       Gaussian pruning は tied-mixture ベースの音響モデルにお い
       て 自 動 的 に 有 効 となる.Gaussian Selection の使用には
       mkgshmm で変換されたモノフォンモデルが必要である.

       -tmix K
              Gaussian pruning でコードブックごとに上位K個のガ ウ
              ス分布を計算する. (default: 2)

       -gprune {safe|heuristic|beam|none}
              Gaussian pruning の手法を指定する.
              (default: safe (標準版) beam (高速版))

       -gshmm hmmdefs
              Gaussian Mixture Selection 用のモノフォン音響モデル
              を指定する. GMS用モノフォンは通常のモノフォンか ら
              mkgshmm(1) によって生成できる.
              デフォルトは指定無し(GMSを使用しない).

       -gsnum N
              GMS 使用時,全モノフォンの状態の中から上位 N 個の状
              態のみトライフォンを計算する (default: 24)

   探索パラメータ(第1パス)
       -b beamwidth
              ビーム幅.HMMのノード数で指定する.値が大きいほど安
              定 した結果が得られるが,処理時間とメモリ量を消費す
              る.

              default値:モデルによって変化する
                400 (monophone 使用時)
                800 (triphone,PTM 使用時)
               1000 (triphone,PTM,engine=v2.1)

       -1pass 第1パスのみ実行する.単語3-gramの指定が無い場合自動
              的にこのモードになる.

       -realtime

       -norealtime
              第1パスを実時間処理するかを明示的に指定する.デフォ
              ルトは,ファイル入力について OFF (-norealtime), マ
              イ ク ・NetAudio ・ ネ ッ ト ワ ーク入力について ON
              (-realtime).このオプションは CMN と密接な関係に あ
              る:OFF の際は CMN は1入力ごとにそれ自身から計算さ
              れるが,ON の場合は直前の5秒分の入力の値を常に用い
              る.-progout も参照のこと.

       -cmnsave filename
              認識中に計算したCMNパラメータをファイルへ保存する.
              保存は一入力認識のたびに行われる.すでにファイル が
              ある場合は上書きされる.

       -cmnload filename
              初期CMNパラメータをファイルから読み込む.ファイルは
              "-cmnsave" で保存したファイル.これによってマイク入
              力やネットワーク入力においても起動後の入力第1発話か
              らCMNを適用できる.

   探索パラメータ(第2パス)
       -b2 hyponum
              仮説エンベロープの幅.仮説の各長さごとに,この数 を
              越 える仮説が展開されたらそれより短い仮説を展開しな
              いようにする.探索失敗を防ぐ効果がある.
              (default: 30)

       -n candidate_num
              この数の文仮説が得られるまで探索を続ける.得られ た
              仮 説はスコアで再ソートされ、上位順に出力される. (
              参考:-outputオプション).

              Juliusでは第2パスの探索の最適性は厳密には保証されな
              い ため,最尤候補が常に最初に得られるとは限らない.
              この値が大きいほど真の最尤仮説が得られる可能性が 高
              く な る が , 長く探索するため処理時間は大きくなる
              .(default: 1)

              default値:エンジン設定(--enable-setup=)に依存
                10  (standard)
                 1  (fast,v2.1)

       -output N
              "-n"オプションで指定した仮説数のうち,上位N個を出力
              する
              (default: 1).

       -sb score
              ス コアエンベロープの幅.各フレームごとに,それまで
              の最大スコアからこの幅以上離れた部分について はscan
              しない.第2パスの音響尤度計算の高速化に効果がある.
              (default: 80.0)

       -s stack_size
              解探索中にスタックに保持する仮説の最大数.値が大 き
              い ほど安定した結果が得られるが必要メモリ量が増える
              .(default: 500)

       -m overflow_pop_times
              解探索打ち切りと判断する展開仮説数のしきい値.展 開
              さ れた仮説数がこの数を越えたとき,そこで探索を打ち
              切る.値が大きいほどあきらめずに探索を続けるが, 探
              索失敗時の処理時間は長くなる.(default: 2000)


       -lookuprange nframe
              単 語展開時に前後何フレームまでみて展開単語を決める
              かを指定する.短い単語の脱落防止に効果があるが, 値
              が大きいと展開仮説が増えるため遅くなる.
              (default: 5)

       -looktrellis
              単 語仮説を完全にトレリス内の単語だけに絞り,最尤フ
              レーム検索も第1パスのトレリス単語の前後に絞り込 む
              . 特に大語彙では高速化の効果が高いが,誤りが増大す
              ることもある.

   Forced alignment
       -walign
              認識結果に対して,単語単位のViterbiアラインメントを
              行 う.単語ごとにマッチした区間,およびフレームごと
              の平均音響尤度が出力される.

       -palign
              認識結果に対して,音素単位のViterbiアラインメントを
              行 う.音素ごとにマッチした区間,およびフレームごと
              の平均音響尤度が出力される.

       -salign
              認識結果に対して,状態単位のViterbiアラインメントを
              行 う.状態ごとにマッチした区間,およびフレームごと
              の平均音響尤度が出力される.

   サーバーモジュールモード
       -module [port]
              サーバーモジュールモードで起動する.起動後はクラ イ
              アントからのtcpip接続を待ち,クライアントからのコマ
              ンドの処理およびクライアントへの認識結果や入力ト リ
              ガ 情報を送信する.複数文法認識はこのサーバーモジュ
              ールモードでのみ使用することができる.詳細は関連 ド
              キ ュ メ ン ト 参照のこと.ポート番号のデフォルトは
              10500 である.

       -outcode [W][L][P][S][w][l][p][s]
              サーバーモジュールモード時に,クライアントへ送信 す
              る認識結果の内容を指定する.それぞれ 'W' は単語の通
              常の出力文字列,'L' は文法エントリ,'P' は 音 素 列
              ,'S'  はスコアを表す.大文字は第2パス,小文字は第1
              パスに対応する.例えば第2パスの単語と音素列のみ を
              送信したい場合は,"-outcode WP" のように指定する.

   メッセージ出力
       -quiet  音素列やスコアを省略して,ベストの仮説の単語列だけ
              出力する.

       -progout
              第1パスの途中結果を一定時間おきに漸次出力する.

       -proginterval msec
              -progout 時の出力インターバルを指定(単位:msec)

       -demo  "-progout -quiet" に同じ.

   その他
       -debug デバッグ用内部メッセージを出力する.

       -C jconffile
              jconf設定ファイルの読み込み.これらの実行時オプショ
              ン をあらかじめ記述して読み込ませることができる.ま
              た,あるjconf設定ファイル内でこのオプションにより他
              のjconf設定ファイルを include することができる.

       -version
              プ ログラム名・コンパイル時刻・コンパイル時オプショ
              ンを表示して終了する.

       -help  簡単なオプション一覧を表示後終了する.

EXAMPLES
       使用例については付属のチュートリアルをご覧下さい.

NOTICE
       jconf設定ファイル内でファイルを相対パスで指定する場合, そ
       れ は実行時のカレントディレクトリは無関係に,その jconf フ
       ァイルが置いてある場所からの相対パスとして解釈される点に注
       意してください.

SEE ALSO
       julius(1), mkbingram(1), mkss(1), jcontrol(1), adinrec(1),
       adintool(1), mkdfa(1), mkgsmm(1), wav2mfcc(1)

       http://julius.sourceforge.jp/  (main)
       http://sourceforge.jp/projects/julius/ (development site)

DIAGNOSTICS
       正常終了した場合, Julian は exit status として 0 を返しま
       す.エラーが見付かった場合は異常終了し, exist status とし
       て 1 を返します.

       入力ファイルが見つからない場合やうまく読み込めなかった場合
       は,そのファイルに対する処理をスキップします.

BUGS
       Julian  で使用できるモデルのサイズやタイプには若干の制限が
       あります.詳しくはパッケージに付属のドキュメントを参照して
       ください.

       バ グ 報 告・問い合わせ・コメントなどは julius@kuis.kyoto-
       u.ac.jp までお願いします.

AUTHORS
       Rev.1.0 (1998/07/20)
              河原 達也  と  李 晃伸 (京都大学)
              が設計を行いました.


       Rev.2.0 (1999/02/20)

       Rev.2.1 (1999/04/20)

       Rev.2.2 (1999/10/04)

       Rev.3.1 (2000/05/11)
              李 晃伸 (京都大学)
              が実装しました.

       Rev.3.2 (2001/08/15)

       Rev.3.3 (2002/09/11)
              李 晃伸 (奈良先端大)
              が主に実装しました.

THANKS TO
       このプログラムは Rev.3.1 まで京都大学音声メディア研究室(旧
       堂 下 研)において開発されました.Rev.3.2 より以降は Julius
       と統合され,「情報処理学会 連続音声認識コンソーシアム」 に
       おいて公開されています.

       Windows Microsoft Speech API対応版は住吉貴志氏(京都大学)の
       手によるものです.

       さまざまな助言・コメント・御指導いただく関係者各位に深く感
       謝いたします.

$Id: man_julian.html,v 1.4 2002/09/11 21:00:39 ri Exp $